地下鉄をつくり過ぎないこと。(8号線建設より既存線の活用(分岐延伸)を!)
(1998/8/31大阪市交通局に提言し回答有り)(2000/6/7UP、9/15、10/10、2003/8/21一部修正)
[概論〜世界的傾向から〜]
現在大阪には7本の市営地下鉄があり、それと別に阪神本線、京阪本線、近鉄大阪線、JR東西線が市中心部では地下を走っているので、合計11本の地下鉄道が有ることになる。それらは縦横に走っているため、新しい線ほど地下深い所を走ることになる。
都心では地下鉄の駅前にあることを「交通の便が良い」と言うことになっている。実際「駅から1分」などと言うのはかなり交通の便が良いところとされる。ところが「駅から何分」と言うのは通常、地上出口から目的物までの時間で言うので、地下鉄駅のホームに降り立ってから駅の出口(地上)に出るまで8分かかるなら、バスや路面電車に比べて不便だったりする。(しかも階段だったりすると・・・)
バスや路面電車はその点楽で、乗り降りも素早くできる。そういった点が見直されて、バスや路面電車の復活は世界の都市交通の傾向となっている。さらに、平地が多く雨が少ない瀬戸内海気候の大阪では自転車も非常に有効である。(実際自転車に乗る人が他都市と比べて圧倒的に多い。ヨーロッパでは環境問題の観点から自転車を都市交通として積極的に計画・推進している都市も有る。)(右下へつづく)
[図]
下図はフリーハンドにつき、多少、実際と異なることをご了承下さい。
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(つづき)
[8号線について]
なのに現在の大阪市は狂ったように地下鉄建設に邁進(まいしん)している。特に危惧されるのが8号線。(地図参照)
阪急上新庄駅から現在のJR大阪環状線の東側を環状に走って各鉄道を結ぶという。ところが
・ほぼ同様に「JR外環状線」(新大阪ー淡路ー環状線の東側)が走る予定だし、
・そのすぐ外側には大阪府が府道中央環状線沿いに「大阪モノレール」が延伸されてくることになっている。また、
・1駅内側にはJR環状線が既に走っている。
地下鉄8号線はこれらに挟まれて乗客が見込めないのは明白だ。
JR外環状線は既存の高架の貨物線を利用するので建設コストも地下鉄より随分安いはずだし乗る方も楽だ。大阪モノレールも高架で建設コストも割安だし眺めも良く静かで快適だ。一方、地元市民にとっても「都心に乗り入れない、乗り換えのための地下鉄」ならその区間を自転車で飛ばして直接市内に乗り入れる鉄道に乗る方が便利で、早い。(自転車は待ち時間も無い)
(左下へ続く) |
(つづき)
[提案]
市営地下鉄は現在も大半の路線が赤字だという。それでも不経済な新線を建設するのは新線が不便なところを一気に解消するためだという。(交通局長名の返事より) しかし私は不便な新線を建設するより、既存路線に郊外部で支線を接続する事で、鉄道不便地の解消と既存路線赤字解消を同時に解決できるのではないのか、と思う。つまり、
1、「長堀鶴見緑地線」を京橋で分岐して支線を谷町線都島駅に連絡したあと、旭区城北公園から淀川を越え、東淀川区を区役所前から大阪モノレール南摂津駅まで貫通する。
2、「谷町線」を関目駅から分岐して、城東区古市、鶴見区緑方面へ延伸。大阪モノレール門真駅に接続する
3、「千日前線」を鶴橋で分岐して御幸通りコリアタウンを経由し、大池橋から現8号線計画通り、JR東部市場前方面へ延ばす。
(上図参照)
そのほか長堀鶴見緑地線の大正区延伸や、四つ橋線の十三駅、西淀川方面への延伸も、鉄道の無かったところが一気に心斎橋や梅田とつながり、郊外ばかりの環状型新線を計画するよりずっと需要が見込め、既設線部分の高度利用にもる。
[交通局長からの返答]
上記の提案を平成10年8月31日付で大阪市交通局企画課長宛に送ったところ、同年12月18日付で笹倉和忠交通局長名で返答を頂いた。(作成は広報係。提案と回答全文はこちら)
返答書面では大きく2点で反論してあった。
1つは、既に営業している路線に、営業しながら提案の分岐支線への渡り線を接続するのは不可能、とのこと。
しかし最小限の休止期間を設けてでも、将来の黒字化と利便性の向上のため「支線接続案」を実施すべきだと思う。市はニュートラム事故でも何日も運休し、バスで代替運行した経験が有るではないか。
2つ目は支線を作ると運行ダイヤが中心部に制約され支線エリアで粗くしか組めない、とのこと。
しかし、今でも全ての線が市の郊外では粗いダイヤとなっているではないか。(谷町線でも都島以遠に行くのは2本に1本である。)都心部で密、周辺・郊外部で粗のダイヤになることは、むしろ経営上合理的なことと言える。
・・・ということで交通局長からの反論はどちらも将来の需要を軽視する、ピントはずれなものであった。充分に検討したものではなく、「建設促進」を前提とした「為にする」返答と言える。文書で回答してくることは立派であるが、誠意がある回答で無かったのは残念だ。(このようにして多くの不採算事業が推進されるのであろう。)
[大阪の事情〜結論にかえて〜]
大阪市営地下鉄は、自治体が運営する地下鉄網としては日本最大である。(東京の地下鉄の大半は「帝都高速度交通営団」という政府系機関である。都営は12号線を含めて計4路線で名古屋市営より少ない。)
大阪市営地下鉄最初の着工時点は、営団地下鉄をも凌駕する先進の地下鉄であった。
しかし一方、慢性的な赤字体質が指摘され、実際、時間帯により乗客の非常に少ない路線もある。このため、古くから自動改札を導入したり、一人の駅長が何駅も担当するなど人員削減に努めてきた。ところが、現状の支出(人員)を削減することは百も論じられるのに、新線建設に伴う収益見込みは常に非常に甘い。
大阪の地下鉄の決定的な問題は、私鉄との乗り入れがほとんど無く、顧客対象が狭いことである。郊外の人は梅田や難波、天王寺などで乗り換えないと地下鉄に乗れない。この面倒さが地下鉄の経営だけでなく市内中心部の発展をも阻害している。
大阪市営地下鉄は堺筋線、長堀鶴見緑地線となにわ筋計画線以外は第3軌条で電力供給するタイプのトンネルを掘り続けてきた。このため私鉄との乗り入れは非常に困難なのは理解できる。(その中で、中央線が近鉄の協力もあり奈良県から生駒山を貫通して大阪市内を走り、大阪港の底を潜って南港に抜けるは圧巻だ。)しかし残念ながら他の鉄道を、同様に第3軌条道方式に合わせてもらうのは現状無理がある。
せっかく都心に掘った「高価」なトンネルを活かせるには、遠い客を取れない分、幅広く隈(くま)無く取るのが生きる道ではないか。「支線接続案」を薦める所以である。
みなさまへ
長文をお読み頂きありがとうございました。しかし私の提言もむなしく、8号線は工事にかかろうとしています。
21世紀には8号線の経営状態は、借入金の返済を抜きにしても、莫大な借金の利息と乗客の圧倒的少なさで大赤字となるでしょう。つまり、事業自体がまちがいだったという結果になるでしょう。
場合によっては市の財政全体に影響を及ぼすかも知れません。大変残念なことですがそうなれば、平成10年(1998年)時点でこういう意見が有ったということを思い出して頂き、どうすれば避けられたのか?という都市経営の課題解決への一助にしていただきたいと思います。(2000年9月15日)
→読者の声 |