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大阪・関西の魅力〜アクションを起こす人にとって〜(00/6/20記10/27修正)(2003/8/6 魅力5を追加。2004/12/25魅力4の解説と魅力6追加。2004/12/30魅力7追加。)
 大阪の魅力を研究する私にとっての一つのテーマは、堺屋太一(現経済企画庁長官・作家)氏が昭和58年にサンケイ新聞(大阪版)に書いた連載の中にあった「ある調査によると、戦後の新産業74業種の内57業種(77%)は大阪・関西発のものである。」ということについて、「なぜそうなったのか?」の原因を探すことであった。
 去年(1999)であるが、「上方芸能」編集部主催の「イベント・文化仕掛け人学校」というものに参加した。毎回「テーマ講演+参加者交流会」といった構成で、1999年2月22日 FM802取締役編成部長 栗花落 光(つゆり ひかる)プロデューサーのお話を聞いて、眉が開く思いがした。音楽・放送業界についての話であったが、私が色々感じてきたことと合致し汎用性が高い話だと感じた。特に成功者から聞く「具体的な大阪の立地の良さ(注1)だったので自分の推察に対して自信が持てた点で特に意義深かった。
 前置きが長くなったが栗花落氏が語る「大阪の魅力」の話を、私は下記のように理解した。
 

魅力1. 関西は全国の18〜20%のシェア→ここでヒットすると全国につながる。名古屋の様に10%未満だと全国につながりにくい。東京の様に大きいとメガストアが多くて人の顔が見えない。組織対組織になる。一方大阪ではJ-WALKの「何も言えなくて・・・」もレコード会社の一人のプロモーターの力が伝わって大ヒットにつながった。18〜20%のシェアは個人の能力が活かせる最適な市場規模である。

魅力2.関西人はハッキリモノ言う→これが勉強になる。自分の置かれた位置がわかる。→顧客の声を活かした動きができる。

魅力3.東京へのコンプレックス→新しい文化を探している→実績が少ない人間にもチャンスが有る。

魅力4.京阪神3つの文化が刺激し合う。(ニューヨークの、コリアタウン、チャイナタウン、イタリアタウンのように。)→異文化との共存の環境→一元的でない→独自性の維持がしやすい。状況に対する理解力や許容力が培われる。

   関西は個人の力で街を動かせる。

以上、栗花落さんの挙げた魅力4点は諸手を挙げ賛同した上で、以下omp独自の視点による追加を挙げる。

魅力5.押し掛ける情報量が多過ぎない。断りきれない情報が多すぎると自分の頭で考える暇が無い。関西の情報量は少なすぎず多すぎず、自分の頭で考えるのに最適の情報量である。また情報が多過ぎると情報に乗せられてしまう。バブル時代のように、政府ごと将来や先を見る目が情報過多で曇ることもある。

魅力6.関西ことばには独特のアクセント(音程の抑揚)がある。音程で名詞を判別したり主語述語や状況を峻別できるようになっており(中国語の四声みたいですね)、またテレビなどで流れる標準アクセントと大幅に異なり、日常的に音程を意識し、また2種類のアクセントの訓練を受けている。言語を、「音の抑揚や感情表現に注意を向けると、右脳の活動が相対的に高まる」(東北大学 河嶋隆太教授「図解 頭がよくなる 朝、10分の習慣」(2004年PHP研究所)より)そうで、一般的に創造性を司ると言われている右脳が日常的に鍛えられる環境にあるのも、関西の創造力が強い一因ではないだろうか。(もっとも河嶋教授は創造性は右脳だけでなく言語をつかさどる左脳も創造力には重要と指摘しているが、左右同時に鍛えられるに越したことはないだろう。)

魅力7.関西には大企業の比率が小さく、中小企業の経営者や部門責任者の比率が圧倒的に多い。手厚い保護がないため、情報の真贋を見極めるのは死活問題。周りがどう行動していようと、共倒れになっては身も蓋も無い。逆に人と同じ事をやっていては大手に有利になるばかり。常に自分の頭で考える癖が要求される環境である。これらの人の比率が高いせいか、実際の経営者や部門責任者だけでなく、一般サラリーマンや主婦や子供まで、関西の社会全体的に自分の頭で冷静に考える傾向があるように思われる。それは「おれおれ詐欺」にかかる率などでも顕著である。(注3)
 
 


注1:一つの目的に対して成功した人は、自分の努力ばかりを言いがちである。(発明王エジソンも「(天才は)99%が努力」と言っているように。)栗花落氏のように、(大阪の立地という)環境が自分に及ぼしてくれた幸運について客観的に述べられる人は、かなり謙虚で奇特な人だと思う。(→戻る)
注2:カラオケ(井上大佑氏)、少女歌劇(宝塚、OSK)、ビジネスホテル(当時の阪急)、ターミナル百貨店(阪急)、有線放送(有線ブロードキャスト)、生活協同組合(灘神戸生協)、プレハブ(大和ハウス、積水ハウス)、サラリーマン金融(サラ金・消費者金融、アコム、武富士、プロミス)、しゃぶしゃぶ(スエヒロ本店)
注3:2004年大流行した「おれおれ詐欺」。(警察庁のいう「振り込め詐欺」の一種。親に電話を掛け、息子と思わせ「俺俺、車で事故っちゃってぇ、相手から示談金を要求されているので○○銀行にお金を振り込んでくれ」などといったもの。)大阪は車上荒らしなど刑法犯数では東京に匹敵するが、おれおれ詐欺の被害は東京の15分の1と際立って少ない。この点に着目し、静岡県では「大阪のおばちゃん」によるTVCMで啓発を行った。
都道府県 東京都 大阪府 京都府 兵庫県 愛知県 全国
人口
'03年10月
1237万人
(9.7%)
883万人
(6.9%)
265万人
(2.1%)
559万人
(4.4%)
716万人
(5.6%)
12771万人
刑法犯'03年 29万9千件 28万5千件 22万5千件
おれおれ詐欺
'04年1から12月
1157件
(15%)
(26.7億円)
77件
(1%)
(1.67億円)
125件
(1.6%)
(2.3億円)
154件
(2%)
(3.5億円)
594件
(7.7%)
(13.7億円)
約7700件
(150億円)



考察
 魅力1.魅力7について、関西圏の人口が概ね日本の5分の1だからエンドユーザー相手の場合はだいたいシェアは2割ぐらいになる。東京圏が3割ぐらい。ところが大阪は中小企業が多いのに対し、東京は大企業が多いので事業の「決定権」を持つ人の割合が少なく、いきおい、系列や縁故組織の関係で物事が決まってしまい、個人の些末的活動やアイデアは省みられにくい。
 逆説的ではあるが、巨大組織となり役所的になった大企業が「ヒト・モノ・カネが集まらない」を理由に大阪から東京に拠点を移すのは、ある意味で大阪の魅力維持に貢献した行動とも言える。(一方、関西に居てもさらに発展し得る自由闊達な大企業は、是非とも関西で頑張ってほしい。)

 魅力2.について、東京では組織や系列で仕事ができている人が大阪より多い。商品の本当の評価は悪くとも組織力やネームバリューで売れたりする。また、そういうものになびく人が多い。これでは、短期的には売れるが本当に良いものは生まれにくい。同じことが流行語にも言える。大阪発の流行語(例えば「ヤンキー」「ミスド」)は東京発の流行語(例えば「ツッパリ」「ミスター」)より一般的に生命力が強い!(笑)。定着する新産業はもっと生命力が要求される。そのためには小さな商品開発で満足せず、顧客の厳しい声を繰り返し商品にフィードバックしてゆくことが不可欠で、自分の頭で考えてハッキリモノを言ってくれる顧客がいる環境は、新産業の育成には欠かせない。ここで大阪・関西の魅力ポイント、追加です。

 魅力4.について、「絶対的存在」があればあとは「それに倣うだけ」になりがちなので「思考能力を減退させる」のは明らかだ。関西では少なくとも大阪、京都、神戸が鼎立しており、それぞれ「他都市に一目置きつつ自都市の誇りも忘れない」と言ったスタンスである。関東における東京と関西における大阪は驚くほど異なるのである。それが、大阪市が人口でも面積でも一時東京市を凌ぎながら一極集中になりきれない弱点であると同時に、東京が真似できない強みでもあるはずである。



大阪・関西人の性格:出る杭(軽いルール違反)は放っておくのに、困ってそうな人には構う。
ノーベル賞の田中さんも「関西の企業」だったから若くして独自の研究の責任者になれたのではないか。(2002/12/26)

(以下制作中。折に触れ考察を進めたい)